日本のジョギング人口の現状と変化~男女別・年代別分析~

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近年、健康志向の高まりとともに、手軽に始められる運動として注目を集めているジョギング。公園や街中で、カラフルなウェアに身を包んだランナーの姿を見かけることが、すっかり日常の風景となりました。

笹川スポーツ財団が2022年に実施した調査によると、日本国内のジョギング実施人口は877万人に達しています。これは、新型コロナウイルス感染症の影響で過去最高を記録した2020年の1,055万人から減少したものの、依然として多くの人々がジョギングを生活に取り入れている実態を示しています。

特に注目すべきは、この20年間でジョギング人口が大きく変動している点です。2002年から2012年にかけては着実な増加を見せ、その後は増減を繰り返しながらも一定の水準を保っています。このような推移からは、ジョギングが一時的なブームではなく、私たちの生活に根付いた運動習慣として定着していることがうかがえます。

目次

日本のジョギング人口は現在どのくらいで、どのように変化してきているのでしょうか?

2022年の日本におけるジョギング・ランニングの実施人口は推計877万人となっています。これは2020年に記録した過去最高の1,055万人から約178万人減少した数字です。この変動の背景には、新型コロナウイルス感染症による特殊な社会状況が大きく影響していると考えられます。

過去20年間のジョギング人口の推移を詳しく見ていくと、非常に興味深い変化が浮かび上がってきます。2002年時点では実施率が4.8%、推計人口にして483万人程度でしたが、その後、2012年にかけて着実な増加を見せました。特に2002年から2012年までの10年間は、実施率が4.8%から9.7%へと倍増し、推計人口も1,009万人にまで拡大。この時期は、まさにジョギングブームが日本全体に広がっていった時期といえます。

この増加の背景には、健康志向の高まりや、スポーツウェアの進化、スマートフォンアプリなどによるランニング記録の管理が容易になったことなど、様々な要因が考えられます。特に注目すべきは、この期間にジョギングが「特別な運動」から「日常的な運動習慣」へと変化していった点です。

2012年以降は、実施率にある程度の変動が見られるものの、おおむね横ばいで推移してきました。そして2020年、新型コロナウイルス感染症の影響下で、一時的に大きな増加を記録します。この年の実施率は10.2%まで上昇し、推計人口も1,055万人と過去最高を記録しました。これは、外出制限などの影響で、人々が密を避けながら行える運動としてジョギングを選択した結果と考えられています。

しかし2022年の調査では、実施率は8.5%まで低下し、推計人口も877万人となりました。この減少について笹川スポーツ財団の分析によると、コロナ禍でジョギングを始めた人々の中で、継続に至らなかった層が一定数存在したことが要因として挙げられています。つまり、コロナ禍での増加は一時的な現象であり、現在は平常時の水準に戻りつつあると解釈できます。

さらに詳しく実施状況を見ていくと、興味深い傾向が見えてきます。週1回以上の定期的な実施率は2022年時点で5.4%となっており、2020年からわずか0.2ポイントの減少にとどまっています。これは、不定期な実施者は減少したものの、定期的にジョギングを行う習慣が定着している層は、安定的に維持されていることを示唆しています。

また、都市規模別の実施率を見ると、2022年は東京都区部が10.1%と最も高く、人口10万人以上の市で9.2%、町村部で8.4%という結果となっています。この数字からは、都市部ほどジョギング実施率が高い傾向が読み取れます。これは、都市部における運動施設の充実や、ジョギングコースの整備状況、さらには健康意識の違いなどが影響していると考えられます。

このように、日本のジョギング人口は、20年という長期的なスパンで見ると、着実な成長を遂げ、現在は安定期に入っているといえます。コロナ禍による一時的な変動を経て、より持続可能な形でジョギング文化が定着しつつあると評価できるでしょう。

ジョギングの実施率には男女差や年代による違いがあるのでしょうか?

ジョギング・ランニングの実施状況を男女別・年代別に見ていくと、非常に興味深い特徴が浮かび上がってきます。2022年の調査データによると、全体の実施率に大きな男女差が存在し、その差は近年さらに広がる傾向にあることが明らかになっています。

まず男性の実施状況を見てみましょう。2022年の男性全体の実施率は12.3%となっており、推計人口にして612万人に達しています。年代別では40歳代が17.7%と最も高い実施率を示し、続いて30歳代が15.2%、20歳代が14.0%という順になっています。この数字が示すのは、仕事や家庭で責任のある世代がむしろ積極的にジョギングに取り組んでいるという実態です。特に40歳代の高い実施率は、健康意識の高まりや、仕事のストレス解消、体力維持への意識の表れとも考えられます。

一方で、男性の実施率には世代による特徴的な変化も見られます。50歳代以下の年齢層では、2020年までは増加傾向を示していたものの、2022年にかけては減少に転じています。これに対して、60歳代と70歳以上の実施率は2020年と比べてむしろ増加しています。この傾向からは、定年後の世代がより活発にジョギングに取り組むようになってきているという新たな動きが読み取れます。

女性の実施状況は、男性とは異なる特徴を示しています。2022年の女性全体の実施率は4.6%で、推計人口は245万人となっています。これは男性の実施率の半分以下という水準です。年代別では20歳代が10.5%と最も高く、次いで40歳代が7.1%、50歳代が4.6%という順になっています。特に注目すべきは30歳代の実施率が4.2%と過去最低を記録している点です。

女性の実施率の推移には、さらに気になる傾向が見られます。20歳代の実施率は2020年の15.8%から2022年には10.5%へと、5.3ポイントという大幅な減少を記録しました。この減少幅は他の年代と比べても特に大きく、若い女性のジョギング離れという現象が起きている可能性を示唆しています。

男女の実施率の差は、調査開始の1998年から一貫して存在していましたが、2002年から2012年にかけての期間に特に拡大し、その後もその差は縮まっていません。2022年時点で、男性の実施率が12.3%であるのに対し、女性は4.6%と、その差は7.7ポイントにも及びます。この差の背景には、運動習慣における性別の違いや、仕事と家事・育児の両立による時間的制約、さらには運動に対する意識の違いなど、様々な社会的要因が存在すると考えられます。

週1回以上の定期的な実施率を見ても、同様の男女差が確認できます。2022年の調査では、男性が8.0%であるのに対し、女性は2.7%となっています。ただし、女性の定期的な実施率は2020年の2.6%から微増しており、少数ではあるものの、定期的にジョギングを行う女性は着実に存在していることがわかります。

このような男女差や年代による違いは、ジョギング・ランニングの普及における課題を示すとともに、今後の可能性も示唆しています。特に、30歳代の女性の実施率の低さや、若い女性のジョギング離れという現象は、ワークライフバランスの改善や、ジョギングがより取り組みやすい環境づくりの必要性を示していると言えるでしょう。

コロナ禍はジョギング人口にどのような影響を与えましたか?

新型コロナウイルス感染症の流行は、私たちの生活様式に大きな変化をもたらしましたが、ジョギング・ランニング人口にも顕著な影響を与えています。笹川スポーツ財団の調査データを詳しく分析すると、コロナ禍特有の興味深い現象が浮かび上がってきます。

コロナ禍初期となる2020年、ジョギング・ランニングの実施率は10.2%まで上昇し、推計実施人口は過去最高となる1,055万人を記録しました。これは2018年の964万人と比較して約90万人もの増加を示しています。この急激な増加の背景には、感染症対策として実施された様々な行動制限が関係していました。体育館やスポーツジムなどの屋内施設の利用が制限される中、密を避けながら一人でも実施できる運動としてジョギングが注目されたのです。

また、在宅勤務の普及により通勤時間が減少したことで、運動に充てられる時間的余裕が生まれたことも、実施者増加の要因として考えられます。特に男性の実施率は14.9%と過去最高を記録し、推計人口は744万人に達しました。この時期、多くの人々が運動不足解消の手段としてジョギングを選択したことが数字からも読み取れます。

しかし、この増加傾向は一時的なものでした。2022年の調査では実施率は8.5%まで低下し、推計人口も877万人と、約178万人もの減少を記録しています。この変化について、笹川スポーツ財団の政策オフィサーである鈴木貴大氏は「コロナ禍でさまざまな活動が制限される中でジョギングを始めたものの、継続に至らなかった人が一定数おり、その傾向は男性に強かった」と分析しています。

実際、男性の実施率は2020年の14.9%から2022年には12.3%へと2.6ポイント減少しました。この減少は、コロナ禍で一時的にジョギングを始めた層が、行動制限の緩和とともに他の運動やスポーツに移行した可能性を示唆しています。同様の傾向は、筋力トレーニングや体操などの他のエクササイズ系種目でも確認されており、2020年の増加が特殊な社会状況下での一時的な現象だったことを裏付けています。

一方で、注目すべき点は週1回以上の定期的な実施率の推移です。2022年の週1回以上の実施率は5.4%で、2020年の5.6%からわずか0.2ポイントの減少にとどまっています。これは年に1回以上の実施率が1.7ポイント減少したのと比べると、非常に小さな変化といえます。この数字が示唆するのは、定期的にジョギングを行う習慣が定着していた層は、コロナ禍を通じてその習慣を維持し続けたという事実です。

また、都市規模別の分析からも興味深い傾向が見えてきます。2022年の実施率は東京都区部が10.1%と最も高く、人口10万人以上の市で9.2%、町村部で8.4%となっています。一方、20大都市の実施率は2020年の11.8%から2022年には7.6%へと4.2ポイントも減少しました。この変化からは、大都市部でコロナ禍による一時的な実施者の増減が特に顕著だったことがうかがえます。

このように、コロナ禍は日本のジョギング人口に大きな変動をもたらしましたが、その影響は一時的なものにとどまったと評価できます。むしろ、この経験を通じて、ジョギング・ランニングという運動の特性や、継続的な実施の難しさについて、多くの示唆が得られたといえるでしょう。今後は、これらの知見を活かしながら、より持続可能なジョギング文化の構築が求められています。

地域によってジョギング実施率に違いはありますか?

ジョギング・ランニングの実施状況には、地域による特徴的な違いが存在します。笹川スポーツ財団の2022年の調査結果からは、都市の規模や特性によって実施率に明確な差異が見られることが明らかになっています。これらの地域差からは、ジョギング文化の普及における重要な示唆が得られます。

2022年の調査における都市規模別の実施率を詳しく見ていくと、最も高い実施率を示したのは東京都区部で10.1%となっています。これに続いて、人口10万人以上の市が9.2%、町村部が8.4%という順序になっています。この数字が示すのは、都市の規模が大きいほどジョギング実施率が高くなる傾向です。

特に東京都区部の高い実施率の背景には、いくつかの要因が考えられます。まず、都市部には整備された公園や河川敷、ランニングコースなど、ジョギングに適した環境が充実しています。例えば、皇居周辺や駒沢公園、荒川河川敷といった人気のランニングスポットがあり、これらの場所では早朝から夜間まで多くのランナーの姿が見られます。また、都市部ではランニングステーションやシャワー施設などのランナーをサポートする施設も充実しており、通勤途中や仕事帰りのジョギングも行いやすい環境が整っています。

一方で注目すべき変化も見られます。20大都市の実施率は2020年には11.8%と最も高い水準を記録していましたが、2022年には7.6%まで大きく低下し、都市規模別では4番目の実施率となりました。この4.2ポイントという大幅な減少は、他の地域と比べても特に顕著な変化といえます。

この変動の背景には、コロナ禍における都市部特有の状況が影響していると考えられます。2020年、感染症対策として多くのスポーツ施設が利用制限を実施する中、密を避けられる屋外運動としてジョギングを選択する人が都市部で特に増加しました。しかし、行動制限が緩和され、従来の運動・スポーツ活動が再開されると、一時的にジョギングを始めた層の多くが他の運動種目に移行したと推測されます。

人口10万人以上の市における9.2%という実施率は、比較的安定した数字を示しています。これらの都市では、適度な都市機能の集積と自然環境の両立が図られており、ジョギングを行いやすい環境が整っていると考えられます。地方都市ならではの特徴として、自動車交通量が都心部ほど多くないこと、緑地や公園が比較的充実していることなどが、安定した実施率の維持につながっている可能性があります。

町村部の実施率が8.4%という数字を示していることも興味深い点です。都市部と比べると若干低い数字ではあるものの、決して大きな差ではありません。これは、自然豊かな環境を活かしたジョギングコースの存在や、地域コミュニティとの連携によるランニングイベントの開催など、地方ならではの特徴を活かした取り組みが行われている可能性を示唆しています。

また、地域による実施率の違いを考える上で重要な要素として、気候条件や地形の影響も無視できません。日本の気候は地域によって大きく異なり、降水量や気温の差は屋外運動であるジョギングの実施頻度に影響を与える可能性があります。同様に、平坦な土地が多い地域と起伏の激しい地域では、ジョギングのしやすさに違いが生じることも考えられます。

このように、ジョギング・ランニングの実施率には明確な地域差が存在し、それぞれの地域特性が影響を与えていることがわかります。今後、さらなるジョギング人口の拡大を目指すためには、各地域の特性を活かしながら、ジョギングのしやすい環境づくりを進めていくことが重要といえるでしょう。特に、実施率の低い地域では、地域の実情に即した施設整備やコミュニティづくりなど、きめ細かな取り組みが求められています。

今後のジョギング人口はどのように変化していくと予想されますか?

現在の統計データと社会的な傾向から、今後のジョギング人口の変化について考察してみましょう。笹川スポーツ財団の調査結果や最新の動向を分析すると、ジョギング・ランニング人口の将来像について、いくつかの重要な示唆が得られます。

まず注目すべきは、2002年から2012年にかけての実施率の大幅な上昇です。この期間に実施率は4.8%から9.7%へとほぼ倍増し、その後は増減を繰り返しながらも一定の水準を維持しています。この推移が示すのは、ジョギングが一過性のブームではなく、社会に定着した運動習慣として確立されているという事実です。実際、2022年時点でも週1回以上の定期的な実施率は5.4%を維持しており、これは安定した実施者層の存在を示しています。

特に注目に値するのは、健康意識の高まりとジョギング実施率の関係です。人生100年時代を迎え、健康寿命の延伸が社会的な課題となる中、手軽に始められる有酸素運動としてのジョギングの価値は、今後さらに高まっていくと予想されます。上州アスリートクラブの事例に見られるように、高齢者の間でも90歳になっても10キロを走ることを目標にするなど、生涯スポーツとしてのジョギングへの注目が集まっています

一方で、課題も明確になってきています。特に30歳代の女性の実施率が過去最低の4.2%を記録するなど、若い世代、特に女性のジョギング離れが顕著になっています。この傾向を改善するためには、仕事や育児との両立を可能にする環境整備や、安全で快適なランニングコースの整備など、具体的な支援策が必要となるでしょう。

また、都市部と地方の実施率の差も重要な課題です。東京都区部の実施率が10.1%であるのに対し、町村部では8.4%と差が見られます。しかし、この差は必ずしも固定的なものではありません。地域の特性を活かしたランニングコースの整備や、地域コミュニティと連携したランニングイベントの開催など、地方ならではの魅力を活かした取り組みによって、新たなジョギング人口の開拓が期待できます

テクノロジーの進化も、ジョギング人口の拡大に寄与する可能性があります。X(旧Twitter)やその他のソーシャルメディアを通じた情報共有、スマートウォッチやフィットネスアプリによる運動管理など、テクノロジーとの融合は、ジョギングをより魅力的で継続しやすい運動として進化させています。

さらに、環境への意識の高まりも、ジョギング人口に影響を与える要因となるでしょう。二酸化炭素を排出しない環境にやさしい運動として、また、地域の自然や環境を直接体感できる活動として、ジョギングの価値が再評価される可能性があります。

ただし、ジョギング人口の拡大には、いくつかの条件整備が必要です。一つは、安全で快適なランニング環境の整備です。夜間照明の充実や、ランニングステーションの設置、適切な距離表示など、ランナーをサポートする基盤整備が求められます。

二つ目は、初心者でも参加しやすいコミュニティづくりです。上州アスリートクラブのような組織的な取り組みは、ジョギングを始めるきっかけづくりとして、また継続的な実施を支援する基盤として重要な役割を果たします。「走るのって苦しいから1人では続かない。みんながいるから続けられている」という声は、コミュニティの重要性を端的に示しています。

三つ目は、多様なニーズに応える環境の整備です。通勤途中にジョギングができる施設、子育て中でも利用しやすい時間帯の設定、高齢者向けの安全な走路の確保など、様々な生活スタイルや年齢層に対応した環境づくりが必要です。

このように、ジョギング人口の今後は、社会的な健康志向の高まり、テクノロジーの進化、環境意識の向上などのポジティブな要因と、若年層の運動離れ、地域による格差といった課題が交錯する中で展開していくと予想されます。重要なのは、これらの変化を的確に捉えながら、より多くの人々がジョギングを生活の一部として取り入れられる環境を整えていくことです。それが実現できれば、ジョギング人口は緩やかながらも着実な増加を続けていくことが期待できるでしょう。

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